西良朋也
N3 RA
第3回
- 「どんな学生スタッフが寮を運営しているの?」「他のフロアってどんな感じ?」そんな疑問を持つ寮生のためのコラムです。学生スタッフの仕事や人柄、フロアの様子を、それらにまつわる「モノ」と共に伝えていきます。
- 2018年からRAとして多様性の尊重を寮生に訴えてきた。現在はRAからなるDS班(Diversity & Safer Space 推進班)を創設し、その班長を務める。いまや学生スタッフ全員が意識する「多様性」。しかし自身が活動を始めたころの寮では、その理解が進んでいたとはいえなかった。様変わりした現在の雰囲気に触れるたびに、「どんな組織も変化できる」と希望を感じる。RAとなった翌年の2018年4月から多様性推進の取り組みを始め、間に1年間の米国留学をはさみながら現在まで活動を行ってきた。多様性に関する取り組みを管轄するDS班を作ったのは2019年。それ以前は所属していた環境備品班の取り組みを発展させる形で活動を行っていた。環境備品班の基本的な活動は、住環境の向上のための美化活動だ。しかし「住環境」には心理的な安全なども含まれると解釈し、多様性の取り組みを行う足場へと変えた。活動を進めるにあたっては壁もあった。多様性の尊重を訴えることが「政治活動」だと学生スタッフ内で問題視されたのだ。「『ISDAKという住環境に左派の活動を持ち込むな』と言われました」。しかし多様性の推進は政治活動ではなく、あくまで寮生のためのもの。そう主張し何とか提案は通った。寮の運営を管轄する教員への根回しも功奏した。その後は次々と「多様性を考える会@ISDAK」などのイベントやスタッフ研修を開催する。「一人でがむしゃらに突っ走ってた」ような活動初期だった。そのような多様性推進への奮闘の陰には、自身への反省があった。「昔は『留学生大好き』なところがあったんです」。国際部に所属し、入寮当初から留学生にも積極的に話しかけた。そもそもRAになった理由も国際交流の推進に関わりたかったからだ。しかし専門の社会学を学ぶうちに、国籍だけを通して人を判断する自分の認識のゆがみに気付いた。「留学生をあくまでゲストとして扱い、日本人との間に線を引いていた。『外国人』というカテゴリーだけで見て、消費の対象にしていたのだと思う」。以来、ジェンダーや性的指向、宗教など国籍だけに還元されない様々な違いを意識するようになった。今後の目標は、より効果的な手法を用いた研修やワークショップの開催だ。「自分が大切だと思うことをただ伝えていた」これまでの方法ではなく、先行研究で立証された手法を使う。学生スタッフやイベント参加者の理解度の効果測定も強化していく予定だ。自身の卒業も来年に迫る中、後継者の育成も欠かせない。「担当者不在でこの取り組みが絶えてしまってはいけない。後世に引き継ぐことが目標です」。
〇N棟3階とオープンスペース
虹色のステッカーを何枚も扉に貼った自身の個室は「オープンスペース」だ。寮生が自由に出入りしては悩みなどを話すことができる。その他にも匿名で相談できるGoogleフォームの作成など、寮生が安心して住むことのできるフロアづくりの工夫にあふれている。オープンスペースもフォームもあまり利用者はいないものの「いざというとき、こういう場所があることが大事」なのだ。